2017年、橘 沙織ラノから帰国してすぐに独立した。当時、東京の設計事務所で大型ホテルプロジェクトに関わっていたが、会議のたびに「コストを下げるためにどの素材を妥協するか」という話になった。2回目の会議でそれを断り、3ヶ月後に退職した。Mosaic Elmwoodという名前は、彼女がミラノのアパートで見つけた古いモザイクタイルの破片と、スタジオ近くにあったエルムの木から来ている。どちらも、時間をかけて積み重なったものへの敬意を表している。
最初の2年間は仕事が少なかった。2018年に手がけた世田谷の住宅リノベーションが、建築専門誌「DETAIL JAPAN」のウェブ版に掲載されたことで状況が変わった。その後、口コミだけで依頼が増え、2020年には年間受注数を8件に制限することを決めた。制限したのは品質のためだけではない。「1件ごとに本当に驚く瞬間がなければ、続ける意味がない」という理由もある。現在のスタジオは東京・目黒区にある。
橘 沙織2017年にMosaic Elmwoodを設立する前、ミラノのスタジオ「Atelier Vento」で6年間、住宅および商業空間のインテリアデザインを担当した。帰国後、東京の設計事務所で大型ホテルプロジェクトに携わったが、「スケールのためにディテールを犠牲にする文化」に反発し、独立を決意。現在は年間8件以下のプロジェクトに絞り、すべての素材選定を自ら行う。週末は京都の骨董市で古い金具や陶片を探すことが習慣で、それが空間に持ち込む「時間の層」の源泉になっている。「美しい部屋は説明しない。ただそこにある」というのが彼女の一貫した立場だ。