自然素材を使った空間は、完成した日が最も美しいわけではない。木材は使われるほど色が深くなり、石材は触れられるほど表面が滑らかになり、和紙は光を浴びるほど色が変わる。この変化を「劣化」として設計するか、「経年」として設計するかで、素材の選択とメンテナンスの方針が変わる。
木材の経年変化 ¶
クリ材やオーク材は、使われるほど色が濃くなる。目黒の新築住宅(2022年)で使ったクリ材の床は、竣工時は明るい黄褐色だったが、2年後には深みのある茶色になっている。この変化は、ウレタン塗装ではなくオイル仕上げにしたことで起きる。オイル仕上げは傷がつきやすいが、傷も色の一部になる。
石材の経年変化 ¶
砂岩や石灰岩は、水や油を吸収して色が変わる。ミナミ堀江のワインバーの砂岩カウンターは、ワインの染みと水の跡が1年で表面に現れた。これを防ぐためにコーティングを施すことも可能だが、コーティングすると石材の表情が均一になる。Mosaic Elmwoodでは、施主に経年変化のサンプルを見せてから素材を決める。
和紙の経年変化 ¶
美濃紙舎の和紙は、日光が当たる部分と当たらない部分で、5〜10年かけて色の差が出る。これは和紙の繊維が光に反応するためで、止めることはできない。世田谷のリノベーション(2018年)の和紙壁は、現在8年目を迎えている。施主から「壁が部屋の歴史を持ち始めた」という連絡をもらった。
自然素材のメンテナンスの実際 ¶
自然素材のメンテナンスは、化学薬品を使わないことが基本だ。木材はオイルを年1〜2回塗り直す。石材は中性洗剤と水で拭く。和紙は乾いた布で埃を取る。Mosaic Elmwoodでは竣工時に、素材ごとのメンテナンス手順を書いた1枚の紙を施主に渡す。難しいことは書いていない。
経年変化を前提にした素材選定 ¶
経年変化を前提にした素材選定とは、「10年後にどう見えるか」を考えながら素材を選ぶことだ。完成直後の美しさだけで選んだ素材は、5年後に「古くなった」と感じることがある。経年変化を前提にした素材は、5年後に「育った」と感じる。この違いは、素材の選定段階でしか生まれない。
自然素材の経年変化について、実際のサンプルを見ながら話したい方は、スタジオへの来訪をお勧めします。まずhello@mosaicelmwood.comまでご連絡ください。